イジワルな恋人
「怒ってるの……?」
「当たり前だろっ!
あんだけ勝手に動くなっつったのに……刺されてたらどうすんだよっ!」
怒鳴る亮に、身体をすくめて謝る。
「ごめんなさい……」
見上げながら謝るあたしを見て……亮が諦めたようにため息をついた。
「いいよ、もう……ほら、帰るぞ」
反省しながら、まだ怒ってる亮の後ろを歩き始める。
……亮怒ってる。
あたしが勝手な事したから。
亮が怒るのも当たり前だけど……。
反省する事しかできない自分の行動に顔をうつむかせた時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「亮、そんな怒るなよー、いいじゃん、無事だったんだし」
「あ、あたしもそう思いますっ! ね、武ちゃん」
……武ちゃん?
びっくりして顔を上げると、梓が飛びついてくるところだった。
「梓っ!」
「よかったね、何もなくて! あの女がカッター出した時はどうしようかと思ったよー」
梓の言葉に、驚いて聞き返す。
「って、どこから見てたの?!」
梓の話によると、校門であたしと佐伯さんが一緒にいるところを見た梓が、関先輩に言って、関先輩が亮に電話して3人であたし達の会話を聞いていたらしい。