イジワルな恋人
焦りながら考えて……そして。
亮を追い越して、あたしは振り上げた手で男の頬を叩いた。
「……いってぇな! なにす……」
バランスを崩した男があたしを睨むも、あたしのすぐ後ろにいる亮に、言葉を呑む。
「……今度は俺が殴ってやろうか。
ちょうどむしゃくしゃしてたんだよな……」
亮がニヤリと冷たい笑みを見せると、2人組は顔を青くして逃げ出す。
180センチもある男にケンカを売られたら、ああなるのも分かるけど。
2人組みは足早にゲーセンを出て行った。
だけど……亮は、あたしに背中を向けたまま振り向こうとしない。
「……あの」
遠慮がちに声をかけて返事を待っていると、ようやく振り向いた亮に怖い目を向けられる。