その手に触れたくて

「…もう嫌…」

「…え?」


夏美は深くため息を付き、顔を上げる。

ソファーに深く背を付けた夏美は鞄からタバコを取り出し1本くわえ火を点けた。


その沈んだ夏美の顔で何かがあたしの頭に引っ掛かった――…


「え、夏美…もしかして…」


恐る恐る声を出す、あたしに夏美は視線を向け、小さく微笑む。


「分かっちゃったか…」


そう言った夏美は小さく哀しそうな瞳で微笑み、ため息とともに煙を吐き出した。


…分かっちゃったか。

まだ何も言ってないあたしに夏美はそう言った。


あたしの頭に浮かんだのは颯ちゃんの事。

直司達が颯ちゃんの話をしている途中に夏美は深いため息を吐いた。


だから――…


「夏美って――…」

「そう。気になる人って颯ちゃんなの」


あたしの言葉を遮って 夏美は小さく笑った。


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