その手に触れたくて
「あたしの事は幼馴染としか見えねぇってさ…だから今まで違う人と付き合ってたの。颯ちゃんを忘れる為ってのもあるけどね。だからココにもあまり来なかったし、美月と仲良くなってからは全然来なかった」
「…颯ちゃんに言わないの?」
あたしは小さく口を開き夏美に視線を向ける。
「言う言わないじゃなくて、もう何回も無理宣言されてるし…。あたし馬鹿だからさ、遊びでもいいから抱いてよって言ったんだ。じゃあ、それはできねぇってキッパリ言われてた」
「……」
夏美は大きく息を吐き捨て天井を見上げた。
一度だけ、颯ちゃんを見た事があった。つい最近だけど隼人と一緒に居る時に見た事があった。
その時、隼人は“あんま見んな”ってあたしに言った。
あれは彼女でも何でもないって意味で言ったのかは分かんないけど、颯ちゃんは仲良く女の人と歩いていた。
夏美にそんな悩みがあったなんて知らなかったし、気づいてあげる事も出来なかった。
だから自分自身に悔しかった――…
「でも、もういいんだー。颯ちゃんよりいい人見つけてやるもん。…あっ、響さんにしよっかな」
「えぇっっ!!」
夏美がそう言ってすぐあたしは声を上げ、夏美に目線を向ける。
夏美はクスクス笑って、
「だってカッコいいじゃん」
と言って口元を上げて微笑む。