その手に触れたくて

「だから待ってて!!」


念を押すように言って、あたしに背を向けて走って行く相沢さんに、


「待って!!」


あたしは勢い良く叫んだ。

その拍子に相沢さんの足はピタッと止まり、相沢さんは後ろを振り返る。


「何?」

「お願い。お願いだから隼人には言わないで」


あたしは顔を潜めながら手首を擦る。


「でもっ――…」

「お願い!!」


相沢さんの目を見て強く言うあたしに、相沢さんは小さく息を吐き捨てた。


「分かった。でも手当てだけしないと…それに隼人、探してたから…」

「あた…しを?」


分かっていながらも確認するあたしに相沢さんはコクンと頷く。


「教室から出た時、バッタリ隼人と出会って…美月ちゃんの事探してたから」

「……」

「とりあえずガーゼか何か持って来るからここで待ってて!ここなら人気少ないし大丈夫と思うから」


そう言って相沢さんは駆け足で校舎に入って行った。


隼人があたしを探してる…そう思うだけで辺りを見渡している自分が居た。

バレたらどうしょう…。こんな言い訳どうにもならない。

隼人ならきっとこの跡が何なのか見たらすぐに分かるだろう…

ましてやタバコなんて吸わないあたしに…


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