その手に触れたくて
…早く来て…相沢さん。
今のあたしには相沢さんしか頼る事が出来なかった。
どうして相沢さんがそこまでしてくれるのかが分からなかった。
初対面のあたしに…
相沢さんを待ってる間、あたしは落ち着きがなくソワソワしてた。
地面に置いた2つの鞄。
その一つの鞄から密かに振動の音が耳に伝わってくる。
掛けてくる人物を当たっても一人しか居ない。
…隼人だ。
「お待たせ!」
息を切らせながら走って来たのは相沢さんだった。
相沢さんはビニール袋を片手に持ち、あたしに近づくと袋から薬を取り出した。
「とりあえず薬塗ろっか」
コクンと頷いたあたしは水道から手を離し、相沢さんは持っていたタオルで手についていた水滴を拭き取り薬のチューブのキャップを取った。
相沢さんの人差し指に薄い黄色の軟膏が出されていく。
その少量の軟膏をあたしの傷口をそっと触れた。
「大丈夫?」
「…うん」
「って…大丈夫じゃないよね」
相沢さんは苦笑いをしながらそう言って、痛々しそうな顔付きをする。
薬を塗り終えた後、相沢さんは傷口をガーゼで押さえ、その上からテープで固定してくれた。