その手に触れたくて
ふ…と歩く右側のショーウインドーに思わずあたしの目が止まった。
店内に置かれている男性用のマネキンが綺麗に着こなし、あたしはそれに目が行った。
と、言うよりもその首元に巻かれているマフラーに…
Γねぇ、夏美!」
不意に出したあたしの声に夏美は足を止め振り返る。
Γん?どうしたの?」
そう言って夏美は引き戻しあたしの隣で足を止めた。
Γちょっとここ入ってい?」
Γえ…あ、うん」
戸惑い気味にそう呟いた夏美はショーウインドーに目線を向けてから薄ら微笑んであたしを見た。
Γいいよ。入ろっか」
続けて言ってきた夏美はあたしより先に店内に入り、あたしはその後を追った。
さすがクリスマスシーズンだからどこの店も派手に飾り付けがしてあった。入ってすぐ店内を見渡すんじゃなくて、あたしはすぐに目的の場所まで足を進める。
棚に何色ものマフラーが並べてあり、あたしは迷わずに黒色を手に取る。
Γ…隼人?」
不意に聞こえた夏美の声にあたしはコクンと頷く。
Γそっか。いいじゃん」
Γでも…隼人ってマフラーとかすんのかな?ってか普通って何あげるんだろ…。マフラーなんてあげるのかな?」
クリスマスのイベント事に興味がないと言うか今まで無関係だったあたしには、そう言った事が全くわからず手に取ったマフラーを見つめながらあたしはブツブツと呟いていた。