その手に触れたくて
Γさすが隼人だね」
Γさすがって何だよ?」
Γいや、凄いなぁーって思って…」
Γ暇人、夏美の事だから誘ってんだろうなって思ってた。っつーか美月の爪みて気付いたんだけどな」
フッと笑った隼人はあたしの爪に視線を落とし、あたしも同じく視線を落とす。
この前、会った時は何もしてなかった爪が今ではキラキラと輝いている。それを見たあたしは思わず笑みを漏らした。
Γやっぱ、さすが隼人だね」
クスクスと笑い、手に持っていたスクール鞄をソファーに置き、あたしは開けてあったパイプ椅子に腰を下ろす。
さっき買ってきたばかりのビニール袋を膝の上に置き、中からサンドイッチを取り出した。
と同時にあたしの視線はベッドの横にある小さなテーブルに目が行き――…
Γどした?」
隼人の不思議そうにする声で隼人に目を向けた。
Γ隼人、食べないの?」
丁度、昼時の所為でもあってテーブルには昼食が置かれている。
少しだけ手をつけてある雰囲気はあるものの、お皿に入っている全ての食べ物がまだ残っていた。
Γ旨くねぇから食べらんね」
そう呟く隼人は本当にマズそうな顔をしてお膳に目を向ける。
Γ食べなきゃ駄目だって。勿体ないし」
Γだったら美月が食えよ」
Γあたしが食べたら意味ないじゃん。ちゃんと食べなきゃ」
Γへいへい」
隼人は面倒くさそうに呟きあたしが今から食べようとしていたサンドイッチをスッと奪った。