その手に触れたくて
Γうん。…いい物じゃないけど」
少し苦笑い気味で言ったあたしを見た隼人は紙袋に入っている品を取り出し、水色で綺麗にラッピングしてある袋の中から真っ黒なマフラーを取り出した。
Γすげぇ嬉しい。サンキューな、美月」
そう言った隼人はマフラーを自分の首へと巻き付けた。
Γつか…、」
巻き付けた後、思い出したかの様に呟いた隼人にあたしはΓうん?」と言って首を傾げる。
Γ俺…美月に何もねぇや。マジごめん」
本当に申し訳なさそうに呟く隼人は小さくため息を吐き捨てた。
Γいいよ、全然。あたしは何もいらないし、隼人が元気でいてくれるだけで良いから」
Γごめん」
もう一度、謝る隼人にあたしは軽く首を振った。
だって本当に何もいらない。隼人に求める物なんて何もない。ただ隼人が元気でいてくれれば、それだけであたしはいい。
Γ隼人、早く退院出来るといいね」
Γあぁ」
そう呟いた隼人はやっぱり哀しそうな寂しそうな顔をした。
ふと、見せる隼人のその表情。何を思ってんのか、何を考えて何をため込んでいるのか分からないその表情にあたしはただ見てみぬ振りをしていた。
隼人のそのふと見せる表情に触れてはいけない気がした。隼人からしても聞かれてほしくない様に見えたから。
それからの日々はあっと言う間で、気付けば2月に入ってた。
隼人もすっかり退院し、今までの様に学校では隼人と一緒に行動してた。だけど、やっぱりあたし自身もそうだけど、それ以上に疲れきってたのは隼人だった。