その手に触れたくて

Γねぇ、もういいじゃん隼人!!」


隼人が退院してから隼人にこの言葉を掛けるのは何回目になるんだろう。

学校帰りいつもの様に隼人の家に行き、外が暗くなってから隼人はあたしの家まで送り届け、その後、隼人はあたしの家の前でひたすら待つ。


その相手はお兄ちゃん。


退院してから毎日の様に来て隼人はお兄ちゃんを待ち続ける。だけどお兄ちゃんはいつ何時に帰って来るのかも分からない。

そんな分かりもしないお兄ちゃんは隼人はいつも待ってた。隼人とお兄ちゃんが出くわしたのは数回程度。


だけど、あたしと隼人を認めないと一点張りで言うお兄ちゃんは相変わらず機嫌が悪くて会話すら成り立たなかった。

お兄ちゃんはあたしとも話したくないのか、あたしが言う事も全て無視をする。


何がそんなにダメなのか、何であたしと隼人の関係をここまでして崩そうとするのか分かんなかった。


Γねぇ、隼人!!もういいってば!お兄ちゃんなんてほっときなよ!!」

Γよくねぇよ」


寒い2月。あたしの家から少し離れた所で隼人は石段に腰を下ろし両手をポケットに突っ込んだまま頭を膝に埋める。

隼人の首元にはあたしがあげたマフラーが巻かれていて、隼人はもう何回目になるのかわからないくらいのため息を吐き出す。



< 362 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop