その手に触れたくて
Γねぇ、隼人…」
隼人が座る前であたしはかじかんだ手を擦りながら立ったまま隼人を見下ろす。
吐く息は白く夜の気温はグッと落ちていく。
Γ美月は帰れ。つか、家ん中に入れ」
Γ嫌」
Γ嫌じゃねぇだろ。風邪ひくぞ」
Γいいよ、ひいても」
少し投げ遣りになって呟くと隼人は俯いていた顔を上げた。その顔はいまいちよくない顔で隼人は眉間にシワを寄せたままあたしを見上げる。
Γよくねぇって。俺が困る」
Γ何で隼人が困るの?あたしが風邪ひくだけで隼人には害ないじゃん」
Γある」
Γ何が?」
Γ美月が寝込んだら会えなくなる」
そう言った隼人は今までずっとポケットに突っ込んでいた両手を出し、あたしの手を握り締めた。
あたしの手とは比べ物にならないくらい隼人の手は温かかった。
さっきまで震えていた手が隼人の体温を全て奪っていくかのように温かくなっていく。
Γ冷たすぎ」
そう言った隼人はあたしの両手を何度も擦った。
Γ隼人は…隼人は何でそんなに頑張るの?悪いけど、あたしには分かんないよ。隼人がここまでするのが…。これってあたしと隼人の事でしょ?何で誰かに許可もらって付き合わなくちゃいけないの?隼人の考えとか…あたしには分かんない」
あたしを見上げてた隼人は握り締めていた手をそっと離すと同時にゆっくりあたしから視線を逸らし目線を下に落とす。
Γだから…」
そこで一旦、言葉を切った隼人は軽く息を吐き捨てた。