その手に触れたくて
Γお兄ちゃん!!」
そう叫んで、あたしがお兄ちゃんの前まで行こうとした瞬間、その直前にいた隼人に止められた。
あたしの身体を隼人は左腕で止める。その所為で行けなくなったあたしは必然的に足が止まり隼人を見上げた。
軽く首を振る隼人に、
Γだって!!」
声を上げると、隼人の顔付きが余計に曇り、あたしは顔を顰めながら口を閉じた。
と、言うよりも隼人の顔があまりにも怖く感じたからこれ以上、しゃべる気がなくなった。
Γお前、こんな時間に何してる」
隼人が口を開く前にいかにも不機嫌でダルそうなお兄ちゃんの声が痛々しく耳に飛び込んだ。
視線を思わず隼人からお兄ちゃんに向けるとお兄ちゃんはここぞとばかりにいっていいほど不機嫌まっしぐらな顔であたしを睨み付けた。
Γこいつと係わんな」
そう言ってお兄ちゃんはあたしの手をおもいっきり引き、
Γ痛いって!!なんでよ!!何で何も分かろうとしないの!?何で自分ばっか優先すんの!?」
あたしの口は止まろうとせず気付けばお兄ちゃんを睨み付けながら声を上げてた。
Γ何も分かってねぇのはお前だ」
Γ何でよ!!お兄ちゃんじゃん!!」
Γ黙れ。いちいちうっせぇ。中に入れ」
面倒くさそうに吐き捨てたお兄ちゃんはあたしの背中を押し、あたしだけ家の中へと押し込む。
その中に入る一瞬、隼人と軽く目が合ったけど隼人はうっすら笑って軽く頷いた。だけどその見えた顔があまりにも辛そうだった。
Γ響さんに許してもらうまでまた来ます」
パタンと閉まったドア越しから隼人の声が聞こえる。だけど、
Γ許すとか許さねぇとかの問題じゃねぇ。お前に何が出来る。お前の所為であいつにまで被害がくんのは迷惑だ。美月に係わんな。何度来ても俺の答えは一緒だ。来ても意味がねぇ」
ドアの前で立ち尽くすあたしは、そのお兄ちゃんの言葉を聞きながら俯き唇を噛み締めた。