その手に触れたくて

プツンとコールが切れてすぐ、


「どした…美月?」


疲れ切った隼人の声が降りかかる。

その小さく呼ぶあたしの名前に、あたしの涙腺がいっきに緩んだ。


「…隼人?」


震える声が何故か切なくてどうしょうもならなかった。


「どした?」

「うん、声聞きたかっただけ」

「大丈夫か?」

「え?」

「兄ちゃんに何か言われてねぇか?」

「うん」

「ごめんな、美月」


こんな時まであたしの事を心配する隼人。

こんな時にまでまだ謝ってくる隼人。


そんな隼人にあたしの胸が痛んだ。


「何で隼人が謝るの?」

「うん…。自分自身に後悔って奴」

「何それ…」

「普通にしときゃ良かったなって。だったら美月を苦しませてねぇなって…」


そう言った後に隼人の口から大きなため息が出たのを電話越しから聞いた。

そのため息は疲れたって言う証。


「あたしは全然大丈夫。隼人はそのままでいいよ。悪いのはお兄ちゃんじゃん」

「兄ちゃんの事、悪く言うなよ」


また、何故かお兄ちゃんを庇う隼人。



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