その手に触れたくて
「じゃ、なくて…家に居るのが嫌で…」
耳から携帯を離し、ゆっくりとパチンと閉じる。
「ちょ、とりあえず入んなよ。風邪ひいちゃう」
凛さんはつっ立ているあたしの身体を軽く押し家の中へと導く。
「すみません…」
「あたしは全然いいけど、ここに来てるの響は知ってんの?」
ゆっくり首を振るあたしに凛さんは、
「そっか。ま、今日はここに居なよ」
そう言ってあたしの頭を軽く撫ぜる。その仕草に一瞬だけあたしの心がホッとした様に感じた。
「すみません」
「とりあえず部屋行こ?美月ちゃん身体冷えすぎ」
あたしの身体を何度か擦った凛さんはあたしの背中を軽く押しながら凛さんの部屋へと導く。
部屋に入るとさっとは比べ物にならないくらい温かかった。感覚さえなくなりそうなあたしの身体を一気に温めてくれそうだった。
気力さえ失ったままあたしは床にペタンと座り込む。俯くあたしの頭をそっと撫でた凛さんは、
「ごめんね、美月ちゃん…」
そう小さく呟いた。
頭を左右に振るあたしは、ただ俯く事しか出来なかった。
もう時間も時間。でも全く寝れそうじゃない。眠くなくても疲れてる所為か目は閉じていく。
瞼が重い。身体も重いし気分も重い。
その所為であたしの身体は床に倒れ込んだ。