その手に触れたくて
得に何をする事もなくただいるだけなのに一分でも一秒でも時間は刻々と過ぎ去って行く。
あれから数日、風邪と言う病におかされ数日休んでしまった。
そして隼人に出会ってから2週間が過ぎようとした頃だった。
「美月、よかったね。風邪治って」
「うん」
「ほんと、あたしも夏美ちゃんも心配してたんだよ。最近、美月ちゃん元気なかったからさ」
久し振りの夏美と相沢さんとの下校。
グルグルとマフラーを首に巻きつけながら、相沢さんはニコっと微笑み、その横で夏美も軽く何度か頷いた。
「ごめんね、でももう大丈夫だから」
「じゃあ、このままどっかに行っちゃう?」
パーっと表情を明るくした夏美はあたしと相沢さんの前に立ち、後ろ向けに足を進めた。
「あっ、いいねぇ。久し振りだしお茶でもしようよ。寒いしさ、暖かい飲み物でも。ね、美月ちゃん…」
「うん…」
「じゃあ、決まり。夏美ちゃんは何処が――…あっ…」
弾けた声を出していた相沢さんは突然、声を小さく出して呟き、曇らせた表情で前方を見た。
一瞬にして足を止めた相沢さんに続き、あたしと夏美の足も必然的に止まる。
「どうしたの?相沢さん…」
不思議そうに声を出した夏美は目の前の相沢さんを覗き込む。
「うん…。剛が居る」
そう呟いた声に何故かドキンと心臓が高鳴った。
直感だろうか、なんだか良くない予感がしてしまった。