その手に触れたくて

あたしと剛くんは数回出会った。

でも、その事については夏美にも相沢さんにも言ってない。


今更と言うか今頃、何の用なのか。

あたしなのか、それとも相沢さんに会いに来たのか…それさえも分からない。


恐る恐る視線を前方に向けると、もうすぐで校門を抜けようとするその出入り口の傍で剛くんは居た。

あたし達にはとっくに気づいてたみたいで、その視界はあたし達を捕らえてる。


でも、その表情が険しいのは気の所為だろうか。

そう思っていると、その表情が少しづつ距離を縮めてきた。


近づいてくるその剛くんの視線があたしに向いてるのは気の所為だろうか。


「ひ、久し振り剛…」


先に声を出したのは相沢さんだった。

ぎこちない声を出した相沢さんの目は驚いた様子。その、横に居る夏美の当たり前に驚いている。

何で居るの?ってな感じの表情が顔から伝わって来る。


でも、そんな相沢さんなど眼中に入ってない剛くんは、


「あんた、隼人に会いに行っただろ」


トゲのある声であたしに視線を送った。

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