その手に触れたくて
「ねぇ、美月どー言う事?」
剛くんの姿が見えなくなった後、夏美のくすんだ声がスッと耳に入った。
剛くんが姿を消した方向をずっと見てると、
「ねぇ、美月ちゃん…隼人に会いに行ったってほんと?」
今度は相沢さんの驚いた声が耳に伝わる。
じょじょに視界を地面に落とすあたしはゆっくり瞼を閉じて深く深呼吸をした。
もう、会わないって決めたのに。もう、全て消し去ろうとしたのに。
なんで、また気になる事を言い出すの?
これじゃあ、全然忘れられないじゃん。
「…行かなきゃ…」
ポツンと呟いたあたしの腕を誰かにギュッときつく掴まれる。
「ダメだよ、」
そう力強く声をだしたのは相沢さん。
相沢さんはあたしの腕をキツク掴んで行き場を塞ぐ。
「でも、あたしの所為で…」
「あたしには何も分かんない。美月ちゃんが隼人に会って何があったのかは知らないし、美月ちゃんが行った事に隼人がどうなってんのかも分かんないけど、あそこには行っちゃダメだよ」
「でもっ、あたしの所為だよ。だから剛くんが来たんじゃないの?」
「分かんないけどそー言う意味で来たんじゃないと思うよ?ほら、忠告って言ってたじゃん。美月ちゃんを助ける為に来たんでしょ?」
「じゃあ、なんでわざわぜ隼人が揉めてるって言うの?何であたしがまた気になるような事まで言うの?」
「それは分かんないけど、でも美月ちゃんが行っても何にもなんないよ?剛がなんとかするって」
「何とかって何?相沢さんだって分かってると思うけど、剛くんがどーこう出来る問題じゃないでしょ?俺には力不足って言ってた!!」
思わず焦った勢いからそう叫んでしまった。