その手に触れたくて

「寒くね?大丈夫?」


教室の一番奥まで行った隼人は椅子に腰を下ろしながらそう問い掛ける。


「うん。大丈夫」


未だに何でここに来たのかも何で隼人に連れられて来られたのかも不明。


「座れば?」

「……」


椅子に指差す隼人に何故か何も答えられなくて、あたしはその場に立ち尽くした。

そんな隼人はあたしから視線を離し、小さくため息を吐き捨てる。


「俺さ、…まだ美月にはちゃんと言わねぇといけねぇ事がいっぱいあってさ、」

「……」

「あの時の――…」

「うん、知ってる」


もう聞きたくないと思ったあたしは隼人の言葉を遮って、そう小さく呟く。


「…そっか」


隼人は深く息を吐き捨てて顔を顰めた。


「…隼人はもう大丈夫?…ここ」


あたしは自分の頬を擦って隼人に目を向ける。

その仕草に気づいた隼人は「あぁ」って言って口角を上げた。


「良かった」


正直だった。

自分には嘘はつけなかった。

隼人が笑みを漏らすと、嬉しい感情が湧きあがって同じくあたしも微笑んだ。






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