その手に触れたくて

「美月…」


笑ってた隼人の顔が一瞬に変わった。

低く小さくそう呟く隼人の表情は真剣で、その変わった隼人を見ながらあたしはゆっくりと首を傾げた。


「うん?」

「…俺ともう一度やり直してほしい」

「…え?」

「こんな事続きで上手く言えねぇんだけど、俺、やっぱお前が好きだわ。美月じゃねーとダメだわ」

「……」


そう言ってくる隼人に何も言えなかった。

だって今更じゃん。

あれだけ本気で隼人が好きで好きでどうしようもなかって、いっぱいいっぱい好きだよって伝えてたのに、上手くいかなくて。


なのに本気で吹っ切れた今…

正直なんて答えたらいいのかなんて分かんなかった。


遅いよ、隼人。



「だから――…」

「ごめん、隼人。正直、今はまだ分かんない」

「……」

「……」

「…だよな」


悲しそうにそう言ったのは隼人だった。


「……」

「美月からしたら今更って感じだよな」

「……」

「ごめん。いっぱい迷惑掛けて」

「……」

「悪かった」


立ち上がった隼人はあたしの頭をクシャっと撫で、悲しい笑みを見せた後、この場から姿を消した。










< 594 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop