その手に触れたくて
「お兄ちゃん、何か言ったの?」
「あれ?美月、なんも聞いてないの?」
「え、あ…うん」
「じゃあさっき何話してたのよ」
夏美は首を傾げながら眉を顰める。
「あー…ちょっと、ごめん」
勢いつけて立ち上がった拍子にガタン…と椅子が音を鳴らす。
慌てて立ち上がったあたしに夏美と相沢さんは少し目を見開いた。
「どうしたの、美月…」
突然の事に驚く夏美に何も応えず、あたしは急いで教室を飛び出した。
隼人に…
隼人に謝らなければいけない。
まだ、あたし…
何も言ってないや。
だけど、隼人の教室を覗き込んでもそこには姿がなく、そのままあたしは職員室まで走った。
中を覗き込んでも隼人の姿さえ見えなくて、
「…美月ちゃん?」
不意に聞こえた声にあたしの視線はそっちに向いた。
「あ、直司…」
直司は不思議そうにあたしを見つめ首を傾げる。