その手に触れたくて
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「あっ、美月おはよ」
「おはよ」
「珍しいね、美月が食べに行くなんて」
「あー…うん」
朝、リビングに行くとママはこんがり焼けたトーストを皿に置きながら言ってきた。
昨日家に入ってから即行風呂に入り、あたしはすぐに眠りについていた。
だからママとは話す時間さえなかった。門限はお父さんが居なくなってから無くなったけど、それでも必ずママとは話そうとしている。
昨日貰ったメロンパンをテーブルに置き、あたしは椅子に腰を下ろす。
座ってテーブルに置かれている水を口に含みながら、ふと視線を横に向けると、テーブルの端にビールの空き缶が何個かあるのに目がついた。
「お兄ちゃん…帰って来たんだ」
空き缶を見ながら言うあたしにママは「そうみたいね」とうっすら笑う。
「お兄ちゃん寝てるの?」
「ううん。ノックして返事がなかったから覗いて見ると、もぬけの殻だった」
ママはそう言って笑みを漏らし、椅子に腰を下ろす。
でもその顔は心配してるって言う笑みでもある。
あたしはあえて何も言わずにメロンパンの袋を破り、かぶりついた。