廃陸の旅団
漆黒の空間を抜けるとそこには、枯れはてた木々だけが広がる広大な山中だった。


「カムイどうだった?初空間移動の感想は。」

ジンがやけに嬉しそうに聞くのには理由があった。

初めてシルファの空間移動術を使った人は、その言い得ぬ不快感から吐き気をもよおし、体調悪化、だいたいが使い物にならなくなるのだ。

「なんかリヴァイアサンに食われた時のこと思い出しちゃった。うぇ、気持ち悪い。」

「おっほっほ。申し訳ありませんねカムイ様。この術は精霊召喚術の一種でして、シグマと言う精霊の腸内を通り移動しているのです。」

そう解説をしながら続いてシルファも移動してきた。

「腸内……」

「そんな顔すんなよ、便利なんだから文句はいいっこナシ。」

ジンはそう言ってカムイの背をバンと叩くと、頂目指して歩き始める。


三人が移動したのはケルセウムから東にある霊山。

『狂戦士の床山』と呼ばれる場所だった。

「ここにはコカトリスと言う怪鳥とミノタウロスがいるらしい。本来なら強者であるミノタウロスが下位のコカトリスを守っているって普通ならありえねぇ噂から考えて、たぶん突然変異で生まれた稀少種のコカトリスがいるんだろう。」


「ミノタウロスは自身を倒した者にのみ絶対的な服従をしますからね。そんなモンスターならグリーン・スフィアを持っていても不思議ではありません。」

ジンとシルファは一通り説明をしながら山を登っていく。

枯れはてた森林、年中暗雲に覆われている空、全てがここを霊山と呼ばせている原因である。

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