廃陸の旅団

「貴様は……"使霊-シリョウ-"のシルファ。まさか旅団にいようとはな。」

「我が命を払い、今ここに召喚す『Σ-シグマ-』おいでなさい。」

異空間から現れたのは、瞳を持たぬ真っ黒な顔をした巨大な精霊だった。

「シグマ『死の吐息』」

シグマから吐き出された紫色の息。

それが壁や床に触れると、硫酸でもかけられたかのように一瞬にして溶解されていった。

「天道流銃術・速射の弐『フラッシュ・チャージド』」

ハイマンスの打ち出す弾丸。

何万というそれは死の吐息に触れるたびに、少しずつシグマへと向かって進んでいく。

そしてシグマの死の吐息が放出し終わって尚も、射ち続けられた弾丸がシグマを直撃すると、シグマの左腕を引き裂いた。

「つまらぬ余興も終わりにしようではないか。混道流呪、弓、糸術『ブラック・アウト-崩壊の鐘-』」


何千という矢が所構わず放たれていく。

その羽からは糸が垂れていて部屋の中央に集まっている。

その場所にブラックホールが発生し、その中に全てを飲み込もうと引力を発生させる。

「これは……カムイ様、すみません。」

シルファはシグマの口の中へとジンを放り投げる。

そしてカムイを救おうと試みるが、ブラックホールに飲み込まれないようにするのが手一杯で、カムイに近づくことすらできないでいた。

引力は次第に強さを増していき、床は剥がされ飲み込まれていく。

身体すらも持ち上げ飲み込もうとしてきたので、シルファはカムイを見捨て、ジンを救うことを決意する。

『パチン』とハイマンスが指を鳴らした瞬間。

全てを飲み込んでいたブラックホールが消滅し、今まで吸い込んでいた物質や重力を全て一斉に吐き出した。

その圧迫の凄まじさといったら、孔気を拡散させる壁すらもう圧し、吹き飛ばすほどで、カムイは力なくその階の端まで吹き飛ばされていった。

そこにシルファとジンの姿はなかった。




< 207 / 583 >

この作品をシェア

pagetop