廃陸の旅団
なぜだろうか。
マールにはニーヴァスがただの殺戮マシーンには見えなかった。
目の前にいるそれには明らかに人間と同じように絆があり、愛があるように見えたからだ。
「なぜその子は自分で治癒をしないの?」
マールのその質問にウリアは息をつまらせる。
すると小さなか細い声が聞こえた。
「僕は"スクラップ"と呼ばれる失敗作なんだ……上手く細胞をコントロールできないと判明したニーヴァスは処分されこの箱に詰められ廃棄される。僕は自分で治癒を促すことができない。」
その声には生気を感じられない。
処分によって受けた傷を治せないままずっとこの箱で放置されてきたのかもしれない。
「軍の施設で治療してもらう。と言ったな。君たちは軍に造られたのか?」
ジンが重い身体を引きずりながらマールのそばへやってきた。
「そうだ。ニーヴァスは軍によって造られている。」
「その軍がスクラップとして処分したものを治療すると思うのか?」
ウリアは自分でも不安だったところをつかれて言葉を失う。
「たぶん今度こそその子は処分され、君も処分の対象になるかもしれない。」
ジンはウリアに手をさしのべる。
ウリアは戸惑った顔で初めて自分へと差し出された手をじっと見つめた。
「オレ達と一緒に来ないか?そうすればマールが治癒してくれる。」