上海ふたりぐらし
 タクシーがUターンして走り出した。間もなく手を振るT子が見えた。T子とその友人が私たちのタクシーに乗り込み上海市内へ向かった。
「病院に行くって言ったやん。もう、全く、トラブルメーカーやねんから。」
 はい、その通りです。すみません。昔、私は香港でも彼女に迷惑をかけたことがある。T子の友人宅に泊めてもらっていた時、鍵が開かなくて部屋に入れず知り合いがいるバーに行っていた。ことばも通じない所で、私が行方不明になったと、彼女が必死で探していた時に、当の本人は呑気にバーでお酒を飲んでいたのだ。
 一年365日もあるのに、よりによって日本から友達が来る日に、入院した私。おまけに、わざわざ遠いところまで、バスとタクシーを乗り継いで来てくれたのに、危うくすれ違うところだった。彼女が来るのがもう少し遅かったら、私の乗ったタクシーが高速に乗っていたら、もっと面倒なことになっていただろう。私たちは、しばらく興奮状態だった。「何で?どうして?」とお互い疑問をぶつけあっていたが、やがてT子が、
「危うく会えないとこやったけど、でも、こうして会えたから、よしとしよう。」
「うん、そやね。」
 彼女とカラオケ(もちろん中国語)に行くのをすごく楽しみにしていた私。が、さすがに病みあがりなのでムリ。カラオケは断念して、みんなで食事をすることに。写真を撮って日本からのおみやげをもらって、バイバイした。
 T子ともうひとりの上海初めての友人には、本当に悪いことをした。旅行の貴重な時間をムダにさせてしまって。せっかく来てもらったのに、何もできずに迷惑だけかけてしまった。ごめんね。

 ドクターには、安静にするように言われていたが、やっぱり勉強はしたい。退院翌日から授業に出た。Aにもこれからは11時には寝るようにと言われたが、早めに寝たのは2、3日だけで、生活習慣は簡単には変えられない。でも、この時のことはいい教訓になった。気力だけではやっていけないことがわかった。体をこわしたら何にも出来ない。睡眠時間を確保する。ご飯もきちんと食べる。お酒はほどほどに・・・これだけは止められなかったけど。
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