狐面の主人


「な、なな、何だとッ!?
生意気な女だ!素直に媚びていればいいものをッ!!

誰がお前なんぞ買うかッ!
この遊び女が!!」


男は腹を立て、大股で女郎屋を去って行ってしまった。

女郎屋は、一気に熱を失い、冷めきってしまう。


そして、一人、また一人と、


「よくまぁ毎度毎度、上手く追い返してくれるわねぇ、五穂の奴!」


「まったくよ。
あいつの顔見た?ちょいと言われただけで真っ赤になっちゃって!
可笑しいったらありゃしないわ!」


「あんなオヤジに買われなくても、五穂が居れば、いい暇潰しになるんじゃない?」


「五穂ー!
そんなホイホイ断ってちゃ、いい男逃すわよー!」



女達は、口々に五穂を褒める。
彼女が来てから、女郎屋には笑いが絶えないのだ。


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