狐面の主人




しかし、五穂本人は、奥に戻ると、途端にその強気は無くなってしまう。


その場に座り込み、ゆっくりと、その面を外す…。

下に眠る素顔は、年月をかけ、美しさにより一層の磨きがかかっていた。

うっすらと涙ぐんだ瞳は、更に美しさを増す。


袖で涙を拭い、面に向かって呟く五穂。


「……炎尾様……。
貴方様に頂いたお言葉を支えに…、五穂はこの一年…生きて参りました……。

…五穂の殿方は…炎尾様だけにございます…。


いつかまた…迎えに来て下さいますよね…?
五穂を…救って下さいますよね…?

いつか…いつかまた…。」


< 135 / 149 >

この作品をシェア

pagetop