狐面の主人
しかし、五穂本人は、奥に戻ると、途端にその強気は無くなってしまう。
その場に座り込み、ゆっくりと、その面を外す…。
下に眠る素顔は、年月をかけ、美しさにより一層の磨きがかかっていた。
うっすらと涙ぐんだ瞳は、更に美しさを増す。
袖で涙を拭い、面に向かって呟く五穂。
「……炎尾様……。
貴方様に頂いたお言葉を支えに…、五穂はこの一年…生きて参りました……。
…五穂の殿方は…炎尾様だけにございます…。
いつかまた…迎えに来て下さいますよね…?
五穂を…救って下さいますよね…?
いつか…いつかまた…。」