狐面の主人
五穂が目を奪われたのは、炎尾の胸に刻まれた、不気味な痣だった。
八つの炎を模した痣が、中心の大きな痣を包み、絡み合うように描かれている。
その様子はさながら、怪奇絵巻に描かれた、
九尾の狐のよう……。
「五穂。
お前に、知っておいてもらいたいのだ…。
……この痣の経緯を……。」
「………私に………?」
五穂は胸に熱いものを感じた。
炎尾の悲しそうな、辛そうな表情を見ていると、
何とかしたい。
助けて差し上げたい。
そう思えてくるのだ。
「人間である者に言っても…信じてはもらえないかもしれん……。
だが五穂には、五穂だけには、信じてもらいたいのだ…。」
「……はい………。」
五穂には、迷いも恐れも、怯えも無かった。