【短編集】時空郵便
非常階段を駆け上がる。
一段。
二段。
途中から数えるのをやめた。
「はっ……はっ……くそっ」
肺が痛い。
足が重い。
それでも止まれない。
右手には何度も読み返したせいで、ぐしゃぐしゃになった一枚の便箋が握られている。
『今からお前が死のうとする場所に男が現れて、オレを助けて死ぬ。絶対に死なせるな』
たったそれだけ。
差出人の名前もない。
いつ書かれたのかも分からない。
ただ、俺には読めた。
殴り書きのせいで他人なら読むことすら難しいだろうその文字を、俺だけは読むことができた。
俺の字だったからだ。
何度見たって俺の字だ。
それも、冷静な時に書いた字じゃない。
何かに怒って。
何かを憎んで。
紙にペンを突き刺すように書いた時の俺の字だった。
そして何より――
『今からお前が死のうとする場所』
それを知っている人間なんて、俺以外にはいない。
「なんなんだよ……これ」
怖かった。
それでも俺は、ここへ来た。
俺が死のうとしていた場所。
このビルの屋上へ。
誰かが俺を助けて死ぬ。
そんなふざけた未来を止めるために。
一段。
二段。
途中から数えるのをやめた。
「はっ……はっ……くそっ」
肺が痛い。
足が重い。
それでも止まれない。
右手には何度も読み返したせいで、ぐしゃぐしゃになった一枚の便箋が握られている。
『今からお前が死のうとする場所に男が現れて、オレを助けて死ぬ。絶対に死なせるな』
たったそれだけ。
差出人の名前もない。
いつ書かれたのかも分からない。
ただ、俺には読めた。
殴り書きのせいで他人なら読むことすら難しいだろうその文字を、俺だけは読むことができた。
俺の字だったからだ。
何度見たって俺の字だ。
それも、冷静な時に書いた字じゃない。
何かに怒って。
何かを憎んで。
紙にペンを突き刺すように書いた時の俺の字だった。
そして何より――
『今からお前が死のうとする場所』
それを知っている人間なんて、俺以外にはいない。
「なんなんだよ……これ」
怖かった。
それでも俺は、ここへ来た。
俺が死のうとしていた場所。
このビルの屋上へ。
誰かが俺を助けて死ぬ。
そんなふざけた未来を止めるために。