【短編集】時空郵便
踊り場を曲がった。
「うわっ!」
「っ!」
誰かとぶつかりそうになり、俺は咄嗟に手すりを掴んだ。
男だった。
俺より十くらい若いだろうか。
「すみません!」
それだけ言って、青年は俺の横をすり抜けていく。
「おい、ちょっと待て!」
何故呼び止めたのか、自分でも分からなかった。
ただ。
何かがおかしかった。
「もう、なんなんですか!?」
青年が振り返る。
額から汗が流れている。
肩が激しく上下している。
息を吸うたびに喉がひゅうひゅうと鳴っている。
俺と同じだった。
肺が痛くても。
足が重くても。
そんなことに構っていられない。
一秒でも早く上へ行かなければならない。
そんな顔をしていた。
「お前……」
青年はもう俺を見ていなかった。
階段の上。
屋上へ続くその先だけを見ている。
「すみません、急いでるんです!」
再び駆け出す。
「待てって!」
反射的に腕を掴んだ。
「離してください!」
強く振り払われた。
「急がないと人が死ぬんです!」
その言葉に。
俺の身体が固まった。
青年は止まらない。
転びそうになりながら階段を駆け上がっていく。
俺は動けなかった。
右手の中で。
ぐしゃりと音がした。
『今からお前が死のうとする場所に男が現れて、オレを助けて死ぬ。絶対に死なせるな』
「……まさか」
あいつは。
俺と同じ場所へ向かっている。
俺と同じくらい必死になって。
誰かを死なせないために。
こんな時間に。
こんな場所で。
息を切らして。
足をもつれさせて。
誰かが死ぬと叫びながら屋上へ向かう男。
そんな人間が。
偶然、二人いるのか?
「おい!」
俺は走り出した。
「お前、待て!」
「なんなんですか!」
「いいから止まれ!」
青年は振り返りもしない。
「人が死ぬって言ってるだろ!」
俺も止まらない。
「だから止めてんだよ!」
「はぁ!?」
階段を蹴る音が二つ。
荒い呼吸が二つ。
同じ場所へ。
同じように。
「待て!行くな!」
「邪魔すんな!」
屋上へ続く扉が見えた。
青年が先に手を伸ばす。
「待て!」
間に合わない。
青年が勢いよく扉を押し開けた。
「うわっ!」
「っ!」
誰かとぶつかりそうになり、俺は咄嗟に手すりを掴んだ。
男だった。
俺より十くらい若いだろうか。
「すみません!」
それだけ言って、青年は俺の横をすり抜けていく。
「おい、ちょっと待て!」
何故呼び止めたのか、自分でも分からなかった。
ただ。
何かがおかしかった。
「もう、なんなんですか!?」
青年が振り返る。
額から汗が流れている。
肩が激しく上下している。
息を吸うたびに喉がひゅうひゅうと鳴っている。
俺と同じだった。
肺が痛くても。
足が重くても。
そんなことに構っていられない。
一秒でも早く上へ行かなければならない。
そんな顔をしていた。
「お前……」
青年はもう俺を見ていなかった。
階段の上。
屋上へ続くその先だけを見ている。
「すみません、急いでるんです!」
再び駆け出す。
「待てって!」
反射的に腕を掴んだ。
「離してください!」
強く振り払われた。
「急がないと人が死ぬんです!」
その言葉に。
俺の身体が固まった。
青年は止まらない。
転びそうになりながら階段を駆け上がっていく。
俺は動けなかった。
右手の中で。
ぐしゃりと音がした。
『今からお前が死のうとする場所に男が現れて、オレを助けて死ぬ。絶対に死なせるな』
「……まさか」
あいつは。
俺と同じ場所へ向かっている。
俺と同じくらい必死になって。
誰かを死なせないために。
こんな時間に。
こんな場所で。
息を切らして。
足をもつれさせて。
誰かが死ぬと叫びながら屋上へ向かう男。
そんな人間が。
偶然、二人いるのか?
「おい!」
俺は走り出した。
「お前、待て!」
「なんなんですか!」
「いいから止まれ!」
青年は振り返りもしない。
「人が死ぬって言ってるだろ!」
俺も止まらない。
「だから止めてんだよ!」
「はぁ!?」
階段を蹴る音が二つ。
荒い呼吸が二つ。
同じ場所へ。
同じように。
「待て!行くな!」
「邪魔すんな!」
屋上へ続く扉が見えた。
青年が先に手を伸ばす。
「待て!」
間に合わない。
青年が勢いよく扉を押し開けた。