♂性別転換♀

顔と背丈だけは元のままだから、知人に見られるわけにはいかない。


大翔は記憶を消したと言ったが、魔法使いなんて非現実的な輩の言うことなど信じられるか。


そんなことよりこの姿。


体は女でも心は男だ。


スカートを穿いているなんて、顔から火が出るくらい恥ずかしい。


ヘソじゃなくて、顔で茶が沸けますよ。うん。


周りの視線を気にしながら、足早へ駆け抜けた。


大通りを避け裏路地を進む。


そして着いた念願の我が家。


大きくもなく小さくもない、なんとも普通な二階だての一軒家。


この時間帯なら大学生の兄貴と母さんがいるはずだ。


目の前にたたずむ玄関の扉が、地獄へ通じる門みたく重々しい空気が漂う。
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