♂性別転換♀

今朝は敢えて突っ込まなかったが、あのマンションには大翔の両親の姿がなかった。


料理も食器の後片付けも大翔がやっていたし、両親の存在を漂わせる物も見当たらない。


他界か出張。もしかしたら複雑な家庭環境があるのだろうが、大翔が一人で暮らしているのは間違いない。


寂しさをまぎわらすために俺をお姉ちゃんにした。


最初はそう思ったが、やっぱり俺をお姉ちゃんにするには効率が悪い。


では何のために俺を?


「どうした。さっさと入れ」


「あ、すんません」


馬鹿がいっちょまえに考えたって、答えなんて出るわけないか。


―僕を殺せば、魔法が解けるかもね―


大翔が言った言葉。


心の奥底に引っ掛かって、気を抜くと頭の中でリフレインする。
< 63 / 265 >

この作品をシェア

pagetop