♂性別転換♀

初対面の女が自分の名前を知っていたら、気味も悪くなるってもんだ。


でもこれではっきりした。


秘かに想っている加奈子ちゃんも、親友の虎ちゃんまでも、俺との記憶を失っていることに。


現実は、思ったよりも深く心に突き刺さる。


「「どうして俺(私)の名前を?」」


二人同時に声を揃える。


感傷に浸るのは後、今はなんとか誤魔化さないと。


もしここで不審がられたら、大翔になにをされるか分からない!


「あ、えっと……先生に顔写真と名簿を見せてもらったんだ。それで、うん」


我ながらうまい言い訳だ。自分自身に拍手喝さいを送ってやりたい。


二人は納得したのか微笑を浮かべる。


一先ず第一の関門をクリアってところだな。
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