お兄ちゃんは悪魔サマ
*君の為の偽り*
*尚哉side*
唯から話を聞いた次の日、俺は普通に学校に行っていた。
兄貴はそうじゃないみたいだったけど。
俺には唯の残された時間は正確には解らない……だから、本音としては片時も離れたくなかった。
ただ、唯がちゃんと学校へ行けってうるさかったんだ……
協力はして欲しいけど俺にはそこまで迷惑かけられないって。
授業に出たって内容なんて何も頭に入って来ないのにな。
俺は授業中、ずっと考えていた。まずはちゃんとした情報がないと動きようがない。
どうすればそれを集められるのか……?
2限目の退屈な古典の間にフッとある考え思いついた途端、俺は居てもたってもいられなくなって教室を飛び出した。
「おいっ御堂!どこへ行く!!」
「センセ、悪い。体調悪いから早退するわー」
俺は廊下を走りぬけて階段を飛び降りる。後ろから聞こえるセンセの声なんて無視。
いつもは自分の身体能力を隠す為に、スポーツを始めとして体を動かす時は周りに合わせながら、ちょっと運動が得意レベルに抑えてきた。
そりゃただの中坊が100メートル5秒で走れるなんてあり得ないだろ?
3階くらいからなら飛び降りたって全然平気。
じいちゃんが言ってた。俺は数十年に一人の素質の持ち主なんだって。
小さい頃から両親の期待が重くて鬱陶しかった。兄貴にはそれで恨まれるし……
でも、今はそれすら感謝したい。
だって俺のこの力で、唯の為にしてやれる事があるから……