ぼくらの事情

「別にっ、澪路のコトで弱ってるのにつけ込むつもりとかじゃ無いっ。ただ……」



架に言われたように、傷心の絆に優しい顔をして……なんて考えが無かったと言えば嘘になる。



でも、響生はそれを望んではいなかった。



「ただ、黙って悶々としてんのもヤダから言うだけだっ。答えは要らんっ」



あくまで、絆をただ好きであるコトを伝えたい。



それを伝えるだけでなんだか気持ちは満たされて、胸の中はスッと軽くなる。



だから、言い切った響生の顔はやたらに満足そうで、


「…………」


一方的に告げられただけの“好き”に、絆はポカンとその表情を見上げていた。




そんな目の前で自己満足に浸る響生に、


「……響生ってさ」



ポツリと呟いた絆は一度響生から視線を外し、また見上げる。



そして小さく息をつき、



「文武両道な生徒会長の癖に、本当は結構カッコ悪いよね」



「……はっ？」



満足そうな顔の不快指数を、一気に上昇させた。