ぼくらの事情
絆の綺麗な二重から雫が落ち、濁っていた響生の頭の中はそれで浸食されていく。
今、絆は目の前に居る自分を必要としているのだろうか。
絆が望むなら昨日決意したように、自分は手を差し伸べて居場所を与えたい。
すっと伸ばした手のひらは絆の指を掴み、ギュッと握り締める。
そして、
「……っ」
潤んだ瞳にぐっと唇を寄せた。
じわっと唇を濡らす涙に、胸の奥から湧き上がる感情。
「これは事故じゃないからなっ」
「えっ」
何が起きたのかわからず、きょとんとした絆の目には相変わらず自分を見つめる響生の顔が映る。
「俺はっ……おまえが好きだっ!」
胸の奥から湧き上がる感情は、考えるより先に口から飛び出していた。
間近から馬鹿デカい声をあげたかと思えば、言ってるそばからみるみるうちに響生の頬が真っ赤に紅潮していく。
それに負けないくらい真っ赤になった絆は、ゆっくりと響生の唇が触れた瞼を指で撫でた。