ぼくらの事情
「……前、親父がアイツの母親に頭が上がんないって言ってた」
そのときは何の気なしに聞き流していたものの、場合によってはとんでもない過去が秘められているのかもしれない。
例えば、
「……アイツの父親は」
もしかしたら、自分たち兄弟と……同一人物なのではないか。
だから、澪路は絆の気持ちを拒んだのではないか……。
「…………」
口を噤んでしまった澪路の横顔は、何を物語っているのか。
もし、自分たちに血の繋がりなんてものがあれば……自分が絆に抱く感情はご法度になってしまう。
握り締めていた拳の中に、じわっと嫌な汗が滲んだ。
永遠にも続きそうな沈黙を打ち破ったのは、
「…………ぷっ」
口を押さえて必死に笑いを堪える澪路の、思わず吹き出した笑い声だった。
「あはははっ。まさか、その写真からそんな想像するなんて」
クククッと喉を鳴らして笑う澪路に呆気にとられ、
「はっ?」
響生の頭の中には疑問符がポンポンポンっと、大量に浮かび上がった。