ぼくらの事情

いつも以上に真っ赤っかになってる響生を後目に、


「あらら。ここちゃんが躊躇なく触っちゃったから響生真っ赤っか」


「どうせ、いつもは澪路さんにやってんだろー」



ブツブツとぼやいてる幼なじみたちは、揃って紅茶を啜ってる。



「澪ちゃんにはしないよー」



架のぼやきに小さく笑って返した絆の言葉に、響生の顔はどこか嬉しそうだ。




……澪路くんにはしてなくて、自分はされたってコトに喜んでるなぁ。



なんて、アップルパイをシャクシャクと食べながら咲奈が思ったのも束の間。



「だって、いつもは澪ちゃんがしてくれるから。わたしに」



笑顔のままサラッと告げられてしまった事実に、


「金輪際、食べかすを口に付けたりするなっ!」



嬉しそうな顔は即座は激昂に変わり、



「……響生だって付けてた癖にー」


絆は不満げに唇を尖らせた。



「今度からは俺が舌で取ったげるよ? 絆嬢」



隙を見てやりとりに乱入した胡散臭い爽やか笑顔は、


「だから、わたしは食べても美味しくないってばっ」


やや絆を苛つかせ、


「そこじゃないってここちゃん」


咲奈を呆れさせていた。
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