ぼくらの事情

迫るだけ迫った挙げ句、熱でぶっ倒れた響生が引きずられるよう保健室に運び込まれた。


カバンを取りに行くと言って、さっさと引き返して行った幼なじみたち。


「んじゃ、響生よろしく」



上っ面で笑顔を貼り付けた架にまたしてもよろしくされ、ベッドに寝かされた響生と共に絆は保健室に取り残されていた。



とりあえず傍らの椅子に座り、少し早い呼吸を繰り返す響生の寝顔を見つめている。


その手にはタオルと響生の眼鏡が握られていた。


「……あっ」


架と咲奈が出て行ってから数分後。


薄くまぶたを開いた響生が何度か目を瞬かせ、


「響生」


視界の端で名前を呼ぶ絆に視線を向けた。


「気分どう?」


まだ節々が痛む体をゆっくりと起こし、心配そうに自分を覗き込んだ絆をじっと見つめ返す。


熱の勢いとは言え、覆い被さり迫った記憶はバッチリ脳裏に残ってるワケで、


「大丈夫?」


そんなに心配そうな顔をされたら、さすがに一人で苛立っていた自分を大人気なく感じてしまう。


「……あぁ」


短く答えた響生がクシャクシャと前髪を掻いた。
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