ぼくらの事情
「バーカ。格好つけてんじゃねぇよっ。何が、……もういいだ」
保健室から出て行くこと数メートル。
ふらつく響生を両手でキャッチした架は、ぐったりした幼なじみを呆れ顔で貶し始めた。
「……うるせぇよ」
肩で息をつき、気力で言い返す響生にいつもの勢いがあるワケも無く、
「拗ねて八つ当たりしてる奴に言われたくないね」
「誰がっ」
「おまえに決まってんだろバカ響生。自分で答えは要らんって言ったクセにあっさり押し倒してんじゃねぇよ、ムッツリがっ」
軽く五倍以上で容赦なく言い返されてしまい、響生はすっかり口を噤んでしまっている。
「……どうせ、玲於に取られそうになって焦ったんだろ」
小さく溜め息を吐いた架の言葉に、ムッと唇を尖らせたかと思えば、
「……そうだよ。せっかく澪路のほとぼりも冷めてきた矢先にあんな奴が出て来やがって」
素直に頷いてみせた響生は悔しげに下唇を噛み、ガシガシと髪を荒っぽく掻いた。