ぼくらの事情
文化祭ムードで盛り上がる放課後の校舎内は、どこを歩いても忙しなく動く生徒たちで溢れていた。
そんな校舎の奥にある部屋を、絆はぼんやり見つめていた。
一週間前。
響生が熱でぶっ倒れてから三日後のこと。
絆は廊下の先にあるこの部屋の前に立っていた。
目的は一つ。
「響生っ」
三日前に熱で倒れた生徒会長の様子を窺う為だった。
生徒会室にやって来た響生を見つけるなり、にこっと笑ってみせる絆に対して、
「…………」
眼鏡の奥の瞳は、すぐさま絆から視線を外した。
「元気になったんだ。良かった」
手に持っていた小さな紙袋を揺らし、絆が響生へと歩み寄っていく。
ずっと伏せたままの響生の視界に、上目に自分を覗き込む絆の顔が映った。
三日ぶりに見るお互いの顔に、それぞれの思いが胸にこみ上げる。
「響生が来たら渡そうと思って……」
「出席日数が合格圏内に入った。留年の心配は無くなった」
「えっ?」