ぼくらの事情
「だいたいっ、 響生がジメジメして鬱陶しいって架が言い出したんじゃないっ! だから仲直りさせようってなったのに、架がここちゃんにベタベタ触って! 響生が見たら怒るよ!」
「もう怒ってんじゃん。それにさ、咲奈だって絆嬢が居ないと寂しいってウルサくゴネるから、こうやって俺が憎まれ役やってんだろー」
咲奈に奪取されてない方の絆の手を架が掴み、両手の自由が無くなった絆はブツクサと言い争う二人の板挟み。
さっきまで涙を滲ませていた瞳は忙しなく右と左を行ったり来たりし、シクシクと感傷に浸る隙すら与えてくれない。
それどころか、
「ぷっ、あはははっ」
乾ききらない涙を残す顔は綻び、正面を向いた絆は声を上げて笑い始めた。
突然笑い出した絆に言い争いを止め、思わず架と咲奈が顔を見合わせている。
「……ほらぁ、咲奈が手を離さないから変なスイッチが入っちゃったよー」
「ち、違うもん! 架が離さないから変人が感染ったんだよ!」
かと思えば今度は、二人しておかしくなった絆の原因の擦り付け合い。