ぼくらの事情
繋がれた手を引き寄せ、腕一杯に震える絆を抱きすくめた。
「俺が居るっ。お前が好きだからずっと傍に居てやるって言っただろっ」
「響、生……」
全身を響生に包み込まれた安心感は更に涙を呼び寄せる。
響生の背中に回した絆の手はセーターの上に深いシワを作り、胸にはギュッと顔を押し当てた。
「でかしたぞ響生……立派な男になったな……」
「ていうか、病室の真ん前で人様の娘を口説くなんてどういう教育してんのよっ」
「……すみません雅さん」
場所も状況も考えず抱き合う若い男女を、個室の入り口の隙間からデバガメする三つの顔。
さすがに目の前でブツブツと声が聞こえてくれば、本人たちも気付くワケで。
「なっ……」
幼なじみたちといい、この人たちといい、何故自分の周りにはこうも堂々と覗き見をする人間ばかりが居るのか……。
唖然と立ち尽くしている響生の傍らでは、
「ママ! 大丈夫なのっ?」
理事長や澪路と並んで入り口に居た雅に、絆が驚いたように詰め寄っていった。