ぼくらの事情
この何とも言えない異様な光景に、
「あの……失礼しますよ」
躊躇いがちに入り口から顔を出した雅の主治医は、一度短い咳払いをしてからカオスの中へと踏み込んできた。
「ご家族の方も居るなら丁度良い。美園沢さん、おめでとうございます。今、三週目です」
「……………」
詳しくは産婦人科で受診してください……なんて、捨てゼリフを残して去っていく後ろ姿をその場に居た全員が呆然と見つめていた。
「ど、ど、ど、どういうこと!?」
「俺も聞いてないですよ、雅さん……」
さっきとは一変して、驚きと動揺で目をまん丸くした絆と澪路が二人して雅へと詰め寄っていく。
そして何故か、響生の隣から二人の間を割ってしゃしゃり出てきた理事長に、
「雅さん? も、も、もしかして……この間、の?」
「……残念だけど、どう記憶を抉り返してもそれしかないのよね。心当たりが」
深ーいため息を零した雅が、眉根を寄せて頭を抱えている。