ぼくらの事情
派手で馴れ馴れしい女子。
チラチラと顔色を窺うムッツリ男子。
極めつけは、傲慢を具現化したようなムカつく男子。
見ているだけで苛立ちが蘇ってくる……。
飽きもせずにゴチャゴチャとやりあう背中の一つが、
「っ!?」
不意にこちらを見上げ、ガラス越しの絆の視線と重なった。
茶色く縁取られたメガネの奥の瞳は、
「なっ……」
絆の姿に気付くなり、べーっと憎たらしく舌を出している。
目が合った恥ずかしさは一気に怒りに変わり、赤くなった頬を隠すように勢い良くカーテンの隙間を閉ざした。
「なによっ。子どもみたいっ」
ぽふっと真っ白なベッドにダイブし、顔を埋めた枕に小さく愚痴ってみる。
このまま眠って、また次の朝が来たら……またあの三人は現れるのだろうか……。
「別に……来なくて良いし」
……あの人たちに付いて行けば、あんなに退屈で仕方ない学校も少しは変わるのかな。
「ないない。だって……全員変人だもん」
コロンと寝返りを打った絆は、そのまましばらくハンガーに掛かった制服を見つめていた。