ぼくらの事情
「そのくらいで勝ったつもりかっ? だったら俺ん家の警備も呼んでやるよっ」
「そんなとこで張り合うなバカ響生っ」
すかさず吹っ飛ばされたばかりの携帯電話を手にした響生を、架は呆れ顔で制した。
「とりあえず今日は帰ろ! 学校に遅刻しちゃうしっ」
「そうだな、また明日迎えに来るよ。絆嬢」
「来なくて結構ですっ」
努めて明るい素振りでこの場を丸くおさめてしまいたい咲奈と架に、絆は物凄い冷めた眼差しを送り続けている。
「おまえなんか頼まれたって来な……ふごっ」
売り言葉に買い言葉で噛みつく響生の口を塞ぎ、もう片方の手で襟元をしっかりと掴んで部屋から引っ張り出した。
「……何なのよ」
扉一枚隔てた向こう側では、五月蝿く喚きながら遠退いていく足音が響いていた。
あれだけ騒がしかった部屋はまた、いつもの静けさを取り戻している。
「はぁ……」
溜め息を漏らし、ゆっくりと歩み寄ったカーテンの隙間から、まだ何やらゴチャゴチャと言い合う三人組の姿をそっと覗いてみる。