ぼくらの事情

「絆嬢ご機嫌よう」


「……なに?」


休み時間。
教科書とノートを片付けていた手を止め、イヤイヤ斜め上に視線を向ける。



食えない笑顔でヒラヒラと手を振る架を一瞥し、絆はすぐさま正面に視線を戻した。


「つれないなぁ~。せっかくお迎えに来たのに」


「お迎え?」



見に覚えのない話に訝しそうに首を傾げた絆の手を握り、


「響生が絆嬢に話があるんだって。はい、行くよー」


「ちょ、ちょっと待って!」


これ以上この三人組と関わってはろくな目に遭わない。


架に掴まれた手を必死に振り解こうと抵抗する絆を、


「……抵抗するんだったらお姫様抱っこしちゃうぞっ?」


腰元に手を添え、低ーい悪魔の囁きで一瞬で黙らせた。



この人ならやりかねない……。


絆の危険感知レーダーが、黙って頷くようガンガン指令を送ってくる。


「絆嬢は素直で助かるよ。じゃ、行こうか。お姫様?」


にっこり笑った架は青ざめた顔のお姫様を、軽やかな足取りでエスコートし始めるのだった。
< 47 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop