ぼくらの事情
「絆嬢ご機嫌よう」
「……なに?」
休み時間。
教科書とノートを片付けていた手を止め、イヤイヤ斜め上に視線を向ける。
食えない笑顔でヒラヒラと手を振る架を一瞥し、絆はすぐさま正面に視線を戻した。
「つれないなぁ~。せっかくお迎えに来たのに」
「お迎え?」
見に覚えのない話に訝しそうに首を傾げた絆の手を握り、
「響生が絆嬢に話があるんだって。はい、行くよー」
「ちょ、ちょっと待って!」
これ以上この三人組と関わってはろくな目に遭わない。
架に掴まれた手を必死に振り解こうと抵抗する絆を、
「……抵抗するんだったらお姫様抱っこしちゃうぞっ?」
腰元に手を添え、低ーい悪魔の囁きで一瞬で黙らせた。
この人ならやりかねない……。
絆の危険感知レーダーが、黙って頷くようガンガン指令を送ってくる。
「絆嬢は素直で助かるよ。じゃ、行こうか。お姫様?」
にっこり笑った架は青ざめた顔のお姫様を、軽やかな足取りでエスコートし始めるのだった。