ぼくらの事情
……ホント。こういう空気読めないとこが坊ちゃまだよねー響生って。咲奈の『お菓子で和んだところで、じわっと核心に迫って行く大作戦』がパーだよ……。
しゃーないって。勉強と運動以外の響生は、ただの小学生だからね。見てみ、あの情けない顔。いくら整っててもヘタレた性格が滲み出てるよ。
「……聞こえてるよ」
お菓子まみれのテーブルを挟んで真っ正面のソファーから聞こえてくる、内緒じゃない内緒話に絆が律儀にツッコミを入れる。
気にせずどうぞって笑顔で促されても、ボロカスに貶された響生が不憫で仕方無い。
「……えっと」
とりあえず視線を正面から再び、整ってるけどヘタレた性格が滲み出てる顔の方へと戻してみる。
「さっさと言えっ」
予想に反して、さっきと寸分違わぬ表情で自分をただじっと見つめる響生に、幼なじみたちの戯れ言なんてこれっぽっちも聞こえてない。
架と咲奈が気にせずどうぞって促した意味が漸くわかった。
幼なじみってスゴイんだ。
なんて一人で納得してる場合じゃない。
目の前の響生はさっきからずっと、射るような眼差しをこちらに向けている。