初彼 -ハツカレ-
チャイムが鳴りそうな少し前、
木積くんは帰ってきた。
――――…苦しそうな顔をして……。
授業が始まってしまって、
木積くんに何があったのか訊けなかった。
でも、
「小泉、ちょっといいか…?」
その授業の次の休憩時間に
木積くんからあたしに言いに来た。
「…………いいよ。」
木積くんの頼みなら、
絶対に訊くんだ。
「…………市丸先輩と、
ダブルス組む事になった……。」
廊下の壁に寄りかかって
暗く小さく呟いた木積くんが言った言葉は
なぜか哀しそうに思えた。
「………木積くんは、
………嫌なの??」
「………嫌じゃない。
市丸先輩も俺の事、
『最近頑張ってる』って言ってて、
市丸先輩も認めてる感じなんだ……。
でも、俺はなるべく組みたくない。」
「………何で?」
あんなに市丸先輩が大好きな木積くんが、
何でそんなに嫌がっているのか分からない。
「…………迷惑掛けたくないんだよ。」
木積くんはポツリ…と言った。