【盲目の天使】番外編
その液体は、スープとは名ばかりで、くず野菜が申し訳程度に入れられているものだった。
・・まずっ!でも、飲めないっていうのも悪いか。
他の兄弟たちは、飢えた獣のように、スープを一気飲みしている。
ふと、ルシルが何も持っていないのに気づいた。
「君は、飲まないのかい?」
「私は・・さっき飲んだのよ」
ルシルはごく普通に答えた。表情には何の変化もない。
そこへ、一人の男の子がやってきて、自分の飲みかけのスープをルシルに手渡した。
「姉ちゃん。これやるよ。朝も食べてないだろ?」
俺は、はっとして自分の手の中のスープを見つめる。
「大丈夫よ。街で食事をしたから」
ルシルは、弟の頭をそっと撫でると、大丈夫だから全部飲みなさいといってスープを弟に返した。
弟を見るルシルのやさしい微笑に、俺はなんだか体が熱くなったような気がしたが、
多分スープを飲んだせいだろうと、自分をごまかした。
これが、俺と彼女の出会いだった。
“運命”の、と言えるかは、はなはだあやしかったが。